安来市の和鋼博物館に行ってまいりました。
たたら製鉄の歴史や製法、日本刀の製法について、詳細に学べます。
博物館に入ったすぐの場所に「けら」が置いてありました。
金へんに母とかいて「けら」。
常用漢字でないため、WEBでは文字化けして表記できません。
10トンの砂鉄(さてつ)と12トンの木炭を三昼夜連続で操業して「けら」が生まれます。
この「けら」の中に日本刀の原料となる玉鋼(たまはがね)が入っているのです。
こちらが炉に砂鉄と木炭を入れているジオラマ。
左右ではふいごで炉に送風しています。
宮崎駿監督のジブリ映画「もののけ姫」でこの送風シーンありましたね。
もののけ姫のテーマが森林保護にもありましたので、どの程度の山林を必要としたかといいますと、1回の操業で必要な12トンの木炭を生産するには1ヘクタールの山林が必要とされました。
江戸時代後期には年間60回たたら操業が行われ、かつ、木炭に適した木に育つには30年・・・。
つまり、1×60×30=1,800ヘクタールの山林面積が必要でした。東京ディズニーランドとディズニーシーをあわせた広さが100ヘクタールですので、ディズニーリゾート18個分と言えば広さがわかりやすいでしょうか。鉄山経営者が「山林王」であったのもうなずけます。
たたら製鉄は山内に170人内外の方が関わっておられたそうです。多くの方が携わった鉄山を簡単ですが紹介します。
(1)まずは、砂鉄採集の鉄穴(かんな)流し。
山を切り崩して水で流しながら砂鉄を採集します。この方法は大量の土砂が下流に流れるので農業灌漑用水に悪影響を与えることから、かんな流しは農閑期の秋から冬に限定されたそうです。これが逆に農民の冬場仕事としてよい収入減であるとともに、鉄山も季節労働者確保につながったそうです。
また、流された土砂が形成した粘土質の平地は田畑として耕作され、棚田として残っているのはこのようにして形成されたものも多いそうです。
皆生温泉の海岸は、日野川上流で行われたかんな流しで流された土砂がたどり着いてできました。
現在でも皆生海岸では砂鉄をチラホラ見ることができます。
(2)けらをつくるたたら場。
財団法人日本美術刀剣保存協会が運営管理されておられます島根県横田町の「日刀保たたら」では、村下(むらげ:監督者)以下11人で現在でも昔からのたたら製鉄を守っておられます。
和鋼博物館では映像で紹介されていますので、展示室に入られるまでにご覧ください。
70時間ぶっつづけで作業をし1,600℃にもなるという炎を読む村下(むらげ)さんが指示しながら、30分おきに砂鉄と木炭を補充していきます。
けらの成長に合わせながら、風の量や角度を調整してノロ(鉄滓)をいかに上手に出すかで玉鋼の出来が決まったそうです。
※詳しくは雲南未来博物館の雲南研究室/日刀保たたらの歴史と横田町で
「たたら製鉄の操業」や「けら出し」などの映像をご覧になれます。
一番感心したのは、地面の下に隠れている床釣りという地下構造。
【日立金属HPたたらの話より 床釣りの構造】
地上に露出している炉で炎を見ながら補給したり、ふいご踏みが勇壮で華やかですが、その炉よりも床釣りを作るまでが一番大切だといういうことでした。
地下には湿気を除けるために、また高温維持の為に、非常に大掛かりな造作がされます。
地下3メートルに石や砂利を敷き詰め、その上に真砂土をかぶせる。
さらにその上に粘土を敷き詰めるのですが、湿気除けに大舟、小舟で木炭を燃やす。
こうしてようやく炉をつくるべき地面が完成という手間の多さ。
鉄山経営者が一番お金をかけたのはこの炉の下の床釣りだそうで、何事も基礎・土台が大切ということを考えさせられました。
(3)けらを加工する大鍛冶場。
たたらでできたけら塊を打ち砕いて玉鋼を選別します。玉鋼以外の残り物は大鍛治場で鍛錬されて錬鉄として刃物の心鉄や道具の素材となりました。この大鍛治はたたら経営できわめて重要でした。
こうして出来た玉鋼から日本刀は生まれます。
和鋼博物館の2階展示室では、日本刀の鍛治方法が映像で詳細に説明されておられます。お時間のあるかたは、是非ご覧ください。圧巻です!
現在刀匠は全国に300人いらっしゃるそうです。
その刀造りには昔ながらの「玉鋼」が必要で、島根県横田町で「日刀保たたら」が昭和52年に復活しました。
財団法人日本美術刀剣保存協会が運営管理されておられます。
※詳しくは雲南未来博物館の雲南研究室/日刀保たたらの歴史と横田町で
「たたら製鉄の操業」や「けら出し」などの映像をご覧になれます。
最後に、この玉鋼の伝統を引き継ぐ、日立金属株式会社安来工場の製品ご紹介。
皆さんのお使いになっておられるカミソリの替え刃の約6割がこの日立金属安来工場で作られております。
素晴らしい製鉄技術が今にも引き継がれ残されております。
そのほか、エンジンの部品やら液晶の部品やらあるそうです。
売店でおすすめのお土産をご紹介します!
「ヤスキハガネどじょうペーパーナイフ」です。
玉鋼の歴史を汲んだ高品質のヤスキハガネ製で、一見ユーモラスなどじょうの形ですが、切れ味は抜群!安来節とハガネが融合した、ストーリー性と実用性と美しさとお土産性を備えたお土産品!人に喜ばれること請け合いです(笑)近くの清水寺の「清水羊羹」もつけると、より喜ばれることでしょう(売店においてありました)。
思わず買ってしまいました(笑)。
子供のころ使用していた「ヤスキハガネの爪切り」を探しましたが、今はもう作られていないとか・・・抜群の切れ味だったのに残念・・・。
売店では包丁や農機具など、たくさんのヤスキハガネ製品を売っています。日本伝統の技術を引き継ぐ製品を是非お求めください。
皆生温泉から30分の和鋼博物館お勧めします!
近くには「ゲゲゲの女房」の布絵さんの故郷「安来市大塚」もございます。
和鋼博物館
〒692-0011
島根県安来市安来町1058
0854-23-2500
休館日:水曜日
大きな地図で見る

